研究概要 |
人工心臓駆動装置は、電磁石の可動鉄心の動きを、リンク機構により拡大し、ディカップリングばねを介してリテイナープレートに伝達し、このリテイナープレートで血液室のダイアフラムを動かし、血液を拍出する方式とした。電磁石設計用のCAEプログラムを開発した。これにより、電磁石の印加電流をパラメータとしたストローク・吸引力特性を求めることができるようになった。また、伝達機構用CAEプログラムと血液ポンプ・生体循環系シミュレーションプログラムを開発した。 これらのプログラムを統合し、コンピュータシミュレーションを行うことで、系全体の動特性を求めながら、電磁石駆動式人工心臓の設計を行い、チタン合金を用いて試作した。電磁石材として、スリーナインの純度を持つ電磁軟鉄を選択した。このため、飽和磁束密度は2〔T〕以上の値が得られたが、強い磁気余効のため、磁気的立ち上がり特性が大幅に劣化した。試作した人工心臓ポンプ血液循環系シミュレータに接続し、出力特性試験を行った。その結果,i)チタン合金で製作したため、加工精度を十分維持することができず、各部で大きな摩擦による損失が生じる。ii)電磁石のギャップ管理を正確に行うことができず、多くの電流を消費してしまう、iii)ラッチも確実に行うことができなかったため、一旦ばねに貯えた機械エネルギーを無駄に放出してしまう,などのことが明らかとなった。以上の原因から、電磁石駆動装置のエネルギー変換効率は、初期に意図していた値より大幅に低下してしまった。これらの結果を十分検討し、今後体内植込み可能な電磁石駆動式人工心臓システムを開発するために必要な、CAEプログラムに改良を加えた。また、できるだけエネルギー伝達機構を簡素化することが重要であるとの見解を得たことから、これに沿ったあらたな電磁石駆動方式を提案することができた。
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