本研究は、流動状態の水の冷却および凍結現象の実験と解析を行ったものである。実験は、昭和59年度における円管の実験、昭和60年度におけるフィン付コイルの実験である。理論解析は、主に昭和61年度に行い、層流と乱流に分けて、水の冷却および凍結を予測する実用式を導びいた。 円管の実験から得られた知見は、流れ方向の水の温度降下は、滞流時間が等しい静水の時間変化にほぼ一致すること、管内の水温が0℃以下になる箇所があれば、いずれ管は閉塞するということである。なお、過冷却現象は静水ほどに顕著に見られなかった。 フィン付コイルの実験から得られた知見は、水温の時間変化は、ある時間まで0℃以上を一定に維持し、ある時間から急激に氷点下に降下することであり、管は閉塞する。出口の水温がプラスであっても、管内の表面付近は0℃以下であり、氷は成長するものと考えられる。この現象は強制流の場合に特に顕著に見られる。フィン付コイルを閉塞させない条件は、管内の水温、特に管内表面の温度を0℃以上に保つことである。 理論解析に関しては、管内の流動を層流と乱流に分けて、水の冷却、氷の形成の時間変化を求める実用式を、対流熱伝達率の概念を用いて初めて誘導した。層流については、厳密解・実験値を比較し、実用式が適用できることを明らかにした。この実用式を用いて、上記の円管およびフィン付コイルの実験から得られた知見の妥当性を検討した。 さらに、従来の解析において全く考慮されていない、凍結に伴う圧力損失の増大、流量減少について、圧力平衡式を立てて新しく理論解析を行った。それによって、より現実に近い凍結防止指針上の知見が得られた。その中で最も重要な成果は、管内に僅かでも氷が形成されると、必ず管は閉塞されるという知見であると考える。
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