研究概要 |
本研究の目的は、複合環境を評価する適切な総合的な評価規準(共通の尺度)を設定し、各要因の影響を定量的に明らかにすること,及び異なった評価規準に対する環境条件の影響を比較することである。実験は男子・女子学生を被験者に用い、日常の室内環境として想定しうる環境条件(室温、夏期22,26,30,34℃冬期10,15,20,24℃:騒音40,50,60,70Leq(A):照度170,700,1480,1xの組みあわせ48パターン)を与えて行なった。実験時間を90分とし、この間に40分の単純作業を含めた。被験者は作業終了直後にアンケート用紙に室内の総合的な"不快感"の申告(3段階)を記入した。実験は男女とも3年間行ない合計2145のサンプルを得た。申告と環境要因の関係をクロス表と数量化理論2類を用いて分析した結果、以下のことが明らかになった。 1.建築室内における室温・騒音・照度の複合環境は、総合的"不快感"に対し加算的に影響を与える。但し、ある要因のストレスが著しく大きければ他要因と無関係に"不快"になり、厳密には加算的ではないが、実用的には加算モデルは有効である。また、実際の複合環境条件に対する評価の予測を行なうために判別区分点を求め、評価の予測と環境設計への適用の方法がしめされた。 2.実験要因以外の要因として、性別・性格・外気温と室温との差をとりあげて検討した結果、これらの要因も申告(評価)に有意な影響を与えることが明らかになった。しかし、その大きさはそれほど著しいものではなかった。 3.環境の評価規準としての主観的な"不快感"と単純作業の作業成績とは明らかに異なる評価規準であるが、それぞれについて環境条件が与える影響が異なることが実験的にしめされた。このような指適は一般論としては多いが、実証的なデータは多くないので、本研究の重要な成果の一つと言える。
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