研究概要 |
本研究では、軟鋼,高張力鋼,ステンレス鋼を対象として35℃,3%NaCl水溶液で回転曲げ疲労試験および単純浸漬試験を行い疲労強度ぬ及ぼす環境効果について総合的な検討を行った。その結果、各材料における腐食疲労のS-N線図には折れ曲り点が存在し、この点の応力はその大気中疲労限よりやや低めの値を示した。また、くり返し連度の影響としては、大気中疲労限により低い応力ではくり返し連度の低下により腐食疲労寿命Nfは大幅に減少するが応力の高い範囲ではその減少量は小さかった。これは低応力・長寿命において疲労損傷に比べ腐食損傷が大きく関与しているためである。腐食疲労強度におよぼす切欠効果としては、高応力レベルで応力集中の影響があらわれるが、低応力レベルでは顕著ではなく、特に特間強度として平滑材と大差はなくなる。更に、海水中腐食疲労におけるき裂発生状態についてSEM観察を行った結果、割れは孔食を起点として生じるものが多くその形態も高張力鋼では不均一全面腐食のため微細な孔食を起点とし、高クウム鋼ではより大きな孔食を起点としていた。溶接継手部の耐食性としては、溶接金属部が最も耐食性が低く、HAZは比較的良好であった。すなわち、HAZ部では強さの上昇にともない耐食性も向上することから比較的耐腐食疲労特性が良好になったものと推側される。また、組織的な観点から母材、溶接金属ともに大きな電気化学的特性の差はないようであり、腐食疲労強度に対するガルバニックセルの効果は比較的小さいものと思われる。なお、ここれら腐食疲労強度に及ぼす環境効果としては主にその金属溶解が主原因とみなせるが、より強度が高くなると水素脆化割れ感受性を生じ始めることが考えられ、上記データのより高い強度レボルを有する鋼への拡張については今後より詳細な検討を要するものと思われる。
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