研究概要 |
3年間の研究を総括して次のような成果を収めた報告書をとりまとめた。 1.雨竜沼湿原のボーリングコア解析の結果により、完新世初期の7000年B.P.頃に冬の降水量が急増して多雪化し、斜面に雪窪が形成され、またガリーが発達して泥炭層中に河川堆積物が運ばれるという事変を認めた。 2.道東の根釧台地では、降水一表面流出量の増大を反映して、流水による谷頭侵食が8000年B.P.頃から復活するようになったことが判明した。 3.北海道における完新世の周氷河現象に関する既往資料の解析により、1000-9000年B.P.,4000年B.P.前後,4000-3000年B.P.に比較的大きなインボリューションが形成されるような短い寒冷期のあったことが推定された。 4.大雪山頂における地中温度の年間変動を数値計算で求め、フィールドデタと併せて、現在の気候環境下で永久凍土が存続し、その活動層は約1m厚で、現在でも冬には凍土のせん断破壊が生じて凍結割れ目が形成されることが確認された。 5.北日本の現在の寒冷地域では、13000-12000年B.P.頃に気候レジュームが氷期から後氷期のそれへと転換している。斜面プロセスは、これにすばやく反応しているが、河川プロセスが活発化してくるのは10000-8000年B.P.頃であったようである。 6.豊平川流域では、10000-8000年B.P.の期間に、上流部で大規模土石流の発生と埋積谷の急な下刻が始まり、下流では扇状地礫層が急速に拡大したものと思われる。 7.現在の北海道の豪雨は、台風ないし熱帯性低気圧が関与して生じており、上述の急激な地形変化は、こうした夏の降水の増強によるものと思われるが、その検証は今後の課題である。
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