研究概要 |
本研究は、金属酸化物触媒の励起状態とその上で進行する光触媒反応の反応中間体を直接検証し金属酸化物の光触媒作用機構、特に、光触媒反応の初期過程を明らかにする目的でなされた。シリカや多孔性バイコールガラス上に担持したMo,V,Wなどの遷移金属酸化物触媒においては、これら酸化物の電荷移動吸収バンドの励起により生成する電荷移動励起三重項が酸化物上で進行する光触媒反応や光誘起反応において重要な役割をなしていることを明らかにした。担持Mo酸化物触媒においては、オレフィンのメタセシス反応が光誘起されることを見いだし光照射下でのその反応中間体をESRで直接検出するとともに量子化学的にその反応性を考察し光誘起オレフィンメタセシス反応の機構を明らかにした。固定化法により調製した担持MoTi酸化物を光触媒として用これが従来の粉末酸化物触媒に比べ著しく高い光触媒活性を有することを見いし、これが金属イオンの高分散性と均性質に基づくことを明らかにした。配位不飽和な表面イオンを持つ粉末MgOを光触媒として用い、バルクの粉末酸化物触媒においても上述した電荷移動励起状態が重要な役割をなすことを示した。微粒子のTi【O_2】触媒を合成し、酸化物の光触媒活性に及ぼす微粒子量子化効果の有無を検討した。【H_2】Oによる不飽和炭化水素の光触媒水素化反応では中間体ラジカルを検出するとともにTi【O_2】の光触媒活性が量子化効果の出現により著しく高くなることを明らかにした。アナターゼTi【O_2】でのみ進行する酢酸の光-コルベ反応においては反応条件下で発光とESR法によりOHラジカルの生成を検証しこれが反応に重要な役割をなすことを明らかにした。また、Tiを含む複合酸化物触媒を調製しその光触媒活性を検討した。Si-Ti系複合酸化物ではSi含量が増加するにつれてTi【O_2】種の活性が増加することを見いだし光触媒としての有用性を明らかにした。
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