研究概要 |
鉱床の形成にマグマが関与したことは古くから多くの研究者によって認められているが、どのような関与だったのか、その定量的なメカニズムについては決定的証拠がないため定説がないといってよい。古典的には鉱床を構成する元素はマグマから供給されると考えられているが、こゝ10数年はマグマを単なる熱源とする考えが強くなってきている。このような背景から本研究が計画・申請され、実施された。調査地域からの試料採集の後、原子吸光による微量元素の測定,残留磁気測定からの火成岩の対比,顕微鏡による検討,EPMAによる鉱物の化学組成の測定,蛍光X線装置・湿式分析による岩石の化学組成の決定等の実験をくりかえした結果、 1.大崩山から祖母山にかけての火成岩と鉱床に関する基礎的かつ普遍的なデータを畜積できた。 2.地質学的に考えて鉱床に密接であると考えられる火成岩は共通して塩素濃度が高く、それをもたらせたマグマにも同様な傾向が期待できる。 3.鉱床を構成する鉱物のうち初期に生成した鉱物には、世界的に例のないほどの塩素含有量が測定され、鉱液も最初は塩素濃度が高かったことが期待できる。鉱床の周辺部の岩石や鉱物には塩素は少量しか含まれず、2の結論を考えると鉱液は花崗岩質マグマから発生したと考えた方がよい。 4.鉱床中で普編的にみられる鉱物には塩素濃度が低い。特に早朝から後期にかけて急激な減少が認められ、この時に鉱石鉱物が沈殿していると判断される。熱力学的に錯塩を考慮すれば、マグマから発生した高塩濃度の鉱液が金属を錯塩として運搬し、地表近くに来たところで地下水と混合し、錫をはじめとする金属が沈殿したと考えられる。
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