1.デカデオキシ核酸の【^1H】NMR 両端に共通のGC塩基対をもち、中央に塩基配列の異なる6個の配列からなる12種のデカマを合成し、【^1H】NMRを測定した。2-DNOEの実験からスペクトルの金帰属を行ない、【^1H】化学シフトの塩基配列依存性を検討した結果、化学シフトは三連子モデル、すなわち最隣接塩基対によって説明できることを示した。ワトソン-クリックのBDNAモデルを仮定して環電流を計算し、実測した"融解シフト"と比較したが、それらの間の相関はあまりよくなかった。この結果は仮定したB-DNAモデルが不適切であったか、あるいは環電流理論が不完全であることによるものと考えられる。現在、両面からの検討を急いでいる。 2.オリゴ核酸のヘアピンループ形成 13-mer CGCGAATTACGCG (【I】)および17-mer CGCGCGAATTACGCGCG (【II】)の二重鎖構造からループ形成の機構に関して【^1H】NMRにより検討した。2本のメチル水素の挙動からこれら二つのオリゴマーは二重鎖とループ構造の間で遅い平衡によって説明できた。二重鎖形成のファトホックエンタルピーおよび活性化エネルギーなどの熱力学的変数および、これらに及ぼす塩濃度効果から、二重鎖-ループ変換の機構はクルーシ型の形成またはブランチ移動によるよりも、二重鎖の完全な分離と再形成によって説明できた。 3.配向DNA繊維の塩基ドメインの構造 プリン残基の8位を重水素で標識したDNAについて固体の【^2H】NMRを測定した。配向DNAから得られた四極子エコースペクトルの線形解析から、A型DNAのプリン面はラセン軸に関して約70°だけ傾斜していたが、B型のそれは分布はあるがほぼ垂直であった。緩和時間【T_1】【T_2】の解析より プリン面のゆらぎ、ラセン軸回りの回転運動が明らかにされた。
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