(1)高配向DNA繊維の構造 DNA配向試料から得られる^<31>PNMRスペクトルの解析、および^2HNMRスペクトルの解析から、それぞれリン酸ジエステル基およびプリン塩基の構造および運動性について検討した。NaDNA繊維に関して、A型およびB型DNAの構造の^<31>PNMRから得られた知見とX線繊維回析によって得られた結果を比較検討し、B型にみられた塩基配列に依存する構造分布を明らかにした。また、C型DNAに関してもC型構造に基づくスペクトルの特徴を明らかにした。^2HNMR法によりDNA塩基面の傾き、振幅の大きな振動運動の特徴を明らかにした。 (2)DNAの構造転移に伴う熱力学パラメータの算出 天然のDNAを用い、エタノール添加によるDNAのB型からA型への構造転移にともなう自由エネルギー変化を求めた。水溶液中でのA-B型転移にともなう自由エネルギー変化は、残基当り約1kcal/molと見積もられた。ミスマッチをもつ二重鎖オリゴ核酸を合成し、二重鎖からヘアピンループ構造変化にともなう熱パラメータを決定し、この構造変化の機構を検討した。二重鎖からループへの変換過程が、中間体としてクルーシ形をとらず、完全な鎖の分離を通ることが示された。 (3)合成オリゴ核酸の溶液構造と分子運動 12種の塩基配列の異なるデカヌクレオチドを合成し、^1Hスペクトルの全帰属を行なった。芳香族非交換プロトンの化学シフトの隣接残基の液について検討した。その結果、化学シフトは5´側の残基の液を強く受けとること、3´側の影響を考慮すれば、これらの両端の残基によりほぼ決定されることが明らかとなった。また理論的考察も行なった。イミノプロトンの交換反応と上記デカマーの融点との相関も検討した。また、^1Hおよび^2HNMRの緩和時間の解析からデカマーの分子運動について知見を得た。
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