栽培ガキの品種はその脱渋の様式及び脱渋の程度に応じて完全甘、完全渋、不完全甘、不完全渋の4群に分類される。本研究は脱渋と関係の深い種子のエタノール生成メカニズムと花粉、成葉の酵素タンパクのアイソザイムの側面より、脱渋性と品種分化との関連性を探ろうとしたものである。 1)上記4群に属する数品種について種子のエタノール生成量を経時的に測定したところ概ね2つのピークがみられ、最初のピークは胚の急速な発育と一致していたが、種子の部位間による生成量の差はみられなかった。他方、種子のアルコール脱水素酵素活性はエタノール生成の急増期に高まるが、生成量との間には一定の関係は認められなかった。しかし、層積種子の酵素活性は完全甘、完全渋の品種群でやや高い傾向が認められた。なお、種子の呼吸活性には4品種群間で一定の傾向は認められなかった。 2)完全甘品種群間で交雑されたF1個体について種子中のエタノール含量を調べたところ、富有を片親にもつ個体群ではエタノール生成量に大きな変異がみられたが、富有を親にもたない個体群では常に低い含量しか示さなかった。このことから種子のエタノール生成を支配する遺伝子の存在が示唆された。 3)デンプンゲル電気泳動により花粉及び成葉について数種類のアイソザイムを分析し、脱渋性と品種分化との関連を調べた。その結果、花粉についての酵素68本のバンドより品種間の類似差を計算したところ、完全甘品種間で比較的高い類似度が得られたが、他の品種群では明確な傾向を認めなかった。成葉についてグルコースフオスフェート・イソメラーゼとリンゴ酸脱水素酵素の2酵素を163品種について分析したところ、18品種の同定を行うことができた。しかし、脱渋性との間に一定の関係を認めるには至らなかった。
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