研究概要 |
圃場抵抗性品種といわれるものの中には、親和性の程度の差によるものや、それ以外の原因即ち一種の回避性に基づくものなどが混在していると考えられ、メカニズムの解明にはそれらを区別して扱う必要が考えられる。本研研者は、圃場抵抗性のメカニズムの解明と簡易検定法の開発を目的に永年研究を行ってきた。その結果、少くとも標準品種群に関する限り、抵抗性程度と密接に相関する各種細胞壁物質含量や全N含量などの幾つかの指標を発見した。さらに、これらの指標について、その動向を最上葉について完全展開時から経時的に調べた結果、弱抵抗性品種の最上葉が、感染の成立しやすい葉展開直後の数日間、強抵抗性品種のそれよりも、より若い生理状態即ち罹病的状態にあることを明らかにした。この現象は加齢の指標としてよく用いられるRNA,タンパク質,クロロフィル含量の経時的変化からも伺うことが出来た。最近、UV照射により葉に生じる褐点の出現程度が、品種により明確に異なること、加齢が進んだ葉組織ほど激しいことを発見した。各種圃場抵抗性品種の葉にUVを照射した結果、弱品種の葉における、より若い生理状態が傍証的に証明された。無数に存在する圃場抵抗性品種が全てこのような機構によるとは限らないが、少くとも標準品種群については、出葉時の加齢の程度が抵抗性の程度と密接に係わっていると結論した。なお、UV照射法を簡易検定に利用出来るかどうかについては、さらに検討中であるが、少なくともひとつの手がかりは得られたものと考えている。なお、本研究において、感染時に形成される数種の抗菌性物質を発見し、単離精製に成功した。本物質群の一つは分子式【C_(20)】【H_(32)】【O_2】、分子量304であり、ジテルペン系新規化合物であることを明らかにした。本物質をS-1と命名し、その抵抗性への関与について現在検討中である。
|