研究概要 |
本研究では桑におけるサイトカイニン様物質の分離と同定を行い、さらにIAAの同定と定量を行って、桑の発芽あるいは生長との関係について検討した。また、中間伐採後の残葉における生長物質の含量と腋芽の生長との関係についても追求し、次のような結果を得た。 1.桑葉中のサイトカイニン様物質の分離と同定。(1)桑葉抽出物はHPTLCにより3つのサイトカイニン様物質に分離され、その1つは島津CS-930の分析から標準物質のZRと同じ展開距離を示した。(2)このように分離・同定された物質はさらにHPLC分析、PVPカラム分析と生物検定等でサイトカイニンであることが確認された。(3)腋芽の発芽前後のサイトカイニンレベルは春切りによる前年伸長枝基部の株の腋芽より前年夏切り後伸長した枝条の腋芽において高かった。両春の発芽前のサイトカイニンレベルにはほとんど差がなく、脱苞・燕口期には両春ともそのレベルが増加する傾向を示した。 2.桑におけるIAA(indole-3-acetic acid)の含量変化。(1)先端部のIAAの分離と定量はHPTLC分析,HPLC分析および生物検定等によって行い、これを確認した。(2)生長停止期と生長開始期のIAA量がほとんど同様であることが注目された。生長期の先端部のIAA量が最大光葉に比べて非常に多かったが、これは先端部の伸長生長が盛んなことを示すとともに腋芽の生長抑制に対して活性的な作用を示しているものと考えられる。 3.桑条伐採後の再発芽と残葉のサイトカイニン含量との関係。(1)残葉のZ含量は残葉の若返りによる生理機能の回復とともに減少した。(2)残葉のZR含量は伐採後7〜10日目の腋芽の脱苞・燕口期まで増加し、光合成能力の増加と伴っていた。(3)残条の腋芽のサイトカイニンレベルは着生葉の有無にかかわらず腋芽の生長が同程度である場合には同様であった。
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