研究概要 |
内外の家畜,実験動物を含む各種動物に分布するTyzzer病の原因菌がどのような関係にあるかを知るため、わが国および外国で分離されているTyzzer菌("Bacillus piliformis")菌株およびその抗血清との間で交差関係をしらべ、かつ、各種血清反応を感染動物病巣中の菌抗原および血清抗体の検出に応用してつぎの成績を得た。 1)感染マウス肝抽出抗原とマウスまたはラット抗血清とを用いた補体結合反応,寒天ゲル内沈降反応,免疫螢光法(IF)あるいはマウス防御試験により、日本およびデンマークのマウス由来株間,米国・西独のスナネズミ,イエウサギ由来株間に交差反応がみられたが、いっぽう、日本のハムスター,ネコ由来株の抗原性は、他の菌株と大きく異なっていた。 2)マウス肝細胞初代培養で増殖した菌体から作製した抗原による酵素免疫測定法(ELISA)により測定した抗体価と間接IFによる抗体価はよく相関し、ELISAの感度はIFにくらべて低かったが、菌株間の抗原性の比較,抗原物質の識別には有用であった。 3)マウス初代培養肝細胞で増殖したラット由来Tyzzer菌RT株で免疫したBALB/Cマウス脾細胞とNS-1細胞の融合により得られた2種類の単クローン抗体(MAb)の反応性をWestern-blotting法および間接IFによりしらべると、ひとつは分子量約54,000の鞭毛成分を認識するIgG2aで、他は分子量約73,000の菌体表面の成分を認識するIgMであった。前者は、RT株抗原のみならずマウス由来MSK(日本),HanA株(デンマーク)抗原とも反応した。両MAbともに、in vivo,in vitroでのRT菌の増殖・病変形成を抑制した。 4)Tyzzer菌MSK株をマウス静脈内に接種し、肝病変の推移と菌増殖過程について酵素免疫測定法による光顕観察を行うと、接種後2日に特異抗原が小壊死巣周囲の肝細胞内に見出され、壊死巣の拡大,増加とともに病巣周囲肝細胞に多量の菌抗原が存在し、壊死巣から離れた健常部においても、菌抗原を充満した肝細胞が見出され、大壊死巣では菌抗原は病巣周囲にのみ認められた。
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