研究概要 |
鳥取県の橋津川汽水域の泥土とイシマキガイから夏期を中心に高濃度の腸炎ビブリオが検出された。菌数の最高値はイシマキガイで2.3×【10^5】cfu/g、泥土で9.3×【10^4】cfu/gであった。イシマキガイ由来株の約20%,泥土由来株の約12%が神奈川溶血毒産生菌であった。次に橋津川汽水域で毎月1回20個体づつのイシマキガイを採取して腸炎ビブリオの菌数を個体別に測定した結果、個体当りの菌数値は水温の高い夏期でも【10^3】cfuレベルからゼロまで連続的に分布していた。イシマキガイの餌になる橋津川の付着性藻類からも夏期を中心に最高1.4×【10^5】cfu/gの腸炎ビブリオが検出された。 神奈川溶血毒産生性腸炎ビブリオD-3株,非産生菌R-13株及び大腸菌YS-2株を投与したイシマキガイを塩分濃度の異なる人工海水を含む紫外線照射装置付環流式水槽内で25℃で飼育し、貝の体内菌数の経時的変動を測定した。その結果、D-3株を投与して15%。及び20%。の人工海水中で飼育する貝からは投与後21日目まで【10^3】〜【10^5】cfu/gの投与菌が検出された。8.8%。人工海水飼育群から検出される菌数は投与後7日目に検出限界以下に減少した。R-13株を投与した貝でも同様の傾向が見られた。D-3株とR-13株を投与した貝を15%。人工海水中で飼育した結果、両菌株とも単独投与群と同じレベルで貝の体内に定着し、貝の体内での両菌株間の拮抗や溶血毒産生能の変化は見られなかった。また、いずれの投与群においても腸炎ビブリオの投与にともなう貝の病理組織学的変化は認められなかった。大腸菌YS-2株を投与した貝の体内における投与菌の菌数はいずれの塩分濃度の飼育群においても投与後2日目に【10^3】cfu/g程度まで減少したが、その後21日目までは菌数が安定していた。これらの成績から腸炎ビブリオはイシマキガイの体内に定着しうること、本菌の定着量は飼育水の塩分濃度に依存していることが明らかになった。
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