研究概要 |
我々は犬およびラットの腎髓外層よりホロ(【Na^+】,【K^T】)ATPaseを精製し、家兎特異抗体を調製した。これらの抗体を用い、(【Na^+】,【K^+】)ATPaseの犬肝細胞ラット膵外分泌細胞と耳下腺細胞の細胞膜におけるこの酵素の分布、ならびにラット腎における生合成とプロセッシングについて研究し、次の結果を得た。 1.肝細胞において、從来(【Na^+】,【K^+】)ATPaseは類洞・側面のみに存在すると考えられて来たが、毛細胆管面にも前者の2.5倍の密度で存在することが明らかとなった。但総数で比較すると、このATPaseの3/4は類洞・側面に存在する。 2.膵外分泌腺細胞においては腺房細胞,導管細胞でともに(【Na^+】,【K^+】)ATPaseは腺腔面により高密度(〜5倍)で存在することがわかった。但腺腔面は全細胞表面積の5%を占めるにすぎないから、(【Na^+】,【K^+】)ATPaseの80%は底・側面に存在する。 3.耳下腺については腺房細胞では腺腔面に少量の(【Na^+】,【K^+】)ATPaseを検出した(底・側面の〜1/3密度)。しかし導管細胞ではほとんどすべての(【Na^+】,【K^+】)ATPaseは底・側面、特に底面湾入部に高濃度に検出された。この所見から、腺房細胞のATPaseの働きによって形成された原唾液中の【Na^+】は導管部で水とともに再吸収され、低張性の唾液となるものと考えられる。 4.(【Na^+】,【K^+】)ATPaseは95Kのαサブユニットと54Kのβサブユニットから成る。ラット腎におけるこの酵素の生合成について研究し、βサブユニットは38Kのポリペプチドとして合成され、合成と同時に小胞体で50Kの高マンノース型糖タンパク質となり、次いでゴルジ装置で54Kの複合型糖鎖をもつβサブユニットに成熟することがわかった。αサブユニットは糖鎖を持たず、95Kのポリペプチドとして合成され、分子量は変化しない。 5.大森はニューヨーク大学においてSabatiniと共同でラットβサブユニットの全一次構造を決定した。
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