研究概要 |
9,研究成果の概要(最終まとめ)単離細胞を用いた化学物質の腎障害作用を検討するin vitroの実験系を確立することを目的とし、Jones'らの方法(1979)を改良し、約95%のviabilityを持つ細胞を、一匹のラットより約【10^8】個得た。血管や腎乳頭部はコラーゲナーゼにより消化されにくく、腎近位尿細管に特異的に分布している酵素の活性が腎単離細胞で極めて高く、また、大部分の細胞に近位尿細管上皮に特異的なモノクローナル抗体が結合したことにより、これらの細胞が主に腎皮質・近位尿細管上皮細胞に由来することが分かった。 腎単離細胞は副甲状腺ホルモンによりcAMP含量が増加することから細胞膜に存在するホルモン受容体の活性が失われていないこと、また、有機アニオンを細胞内に輸送する担体の存在も明らかとなリ、本標本が細胞膜の機能を検討する手段として利用できることが示された。 腎単離細胞のamiopyrine代謝活性は肝単離細胞の約0.4%、腎ミクロゾーム分画の約10分の1,腎組織スライスの約17倍であった。 化学物質の腎単離細胞障害作用は:1)Hg【Cl_2】やCd【Cl_2】,disulfiramのように細胞のSH基と直接反応する物質により、viabilityを失った。しかし、disulfiramの作用がGSHで完全に抑制されるのに対し、Cd【Cl_2】の毒性は2倍量のcysteineやGSHでも完全には抑制されなかった。2)抗生物質としてはgentamycinとadriamycinを用いた所、後者でGSHが低下した。3)cytochrome P-450で代謝的に活性化される物質(cyclophosphamide,paracetamol)の毒性は現れず、薬物代謝活性が低いことと対応していた。一方、4)alcohol dehydrogenaseで活性化されるallyl alcoholの毒性は、酵素活性の高い雌より調製した単離細胞で毒性が強く現れた。この毒性は細胞内GSHを低下させるdiethylmaleateの処置により増強され、これを増加させるGHS合成前駆物質の投与により抑制された。
|