研究概要 |
血液細胞は多能性幹細胞に由来し種々の中間段階の細胞を経て成熟細胞へと増殖,分化する。この過程には種々のCSF(コロニー刺激因子)やIFN(インターフェロン)などのタンパク因子が関与している。本研究ではまず顆粒球の増殖分化を促進するG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)および顆粒球分化のマーカー酵素であるミエロペルオキシダーゼ(MPO)cDNAの単離とその構造解析をおこなった。G-CSFを異常産出するヒトがん細胞(CHU-2)よりG-CSFを精製し、その部分アミノ酸配列を決定した。ついで合成オリゴヌクレオチドをプローブとしてG-CSF cDNAを単離した。この過程でヒトG-CSFには204コあるいは207コのアミノ酸をコードする2種のmRNAが存在することが明らかとなった。このcDNAを用いてヒトG-CSF染色体遺伝子,マウスG-CSF cDNAおよびその染色体遺伝子を単離しその構造を解析した。その結果、ヒト,マウスの染色体上には一個のG-CSF遺伝子(〜2.5kb)が存在し、ともに5個のexonsから構成されておりヒトの遺伝子にのみ、第2intronの5端に2個のsplice donor sitesが並びalternative splicingにより2種のmRNAが合成されることが判明した。次にMPOを発現しているヒトHL-60細胞よりオリゴヌクレオチドを用いてMPO cDNAを単離した。その塩基配列より、MPOは分子量84,000の前駆タンパク質として合成され、種々の修飾をうけ分子量15,000と55,000の二つのサブユニットから成る成熟タンパク質になると予想された。一方、G-CSFやIFN-γを大量に調製する目的でこれらのcDNAをSV40初期遺伝子プロモーターの下流に連結した後BPVウィルスをベクターとしてマウス細胞に導入した。その結果、G-CSFやIFN-γを高能率(1〜20mg/l)に生産する細胞株が得られ、その培養液よりおのおのの因子を精製した。これらの因子には糖鎖が付加されており、蛋白化学的に天然の因子と同等であった。さらに精製G-CSFをマウス皮下に投与したところ、顕著な好中球数の増加を誘起した。
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