研究概要 |
広東住血線虫症における好酸球増多機構ならびに増多した好酸球の意義を検討し、次の様な成績を得た。1.肺動脈へ幼若成虫を移植された非固有宿主(モルモット)の好酸球応答誘導因子は主として虫体の排泄物・分泌物に存在し、一方、固有宿主(ラット)のそれは虫卵や第1期幼虫に存在する。幼若成虫抽出液に対する非固有宿主(マウス)の応答はT細胞非依存性である。つまり、この因子は骨髄に直接作用し、好酸球産生を刺戟する可能性がある。2.モルモットの好酸球は成虫由来のECFにin vitroでもin vivoでも強い遊走能を示すが、ラットのそれは遊走能を示さない。現在、モルモット好酸球におけるECFに対するレセプターの有無、ならびに虫卵や幼虫にもECF活性があるか否かを検討中である。3.肺動脈へ幼若成虫を移植後5〜14日のモルモットの縦隔リンパ節細胞と脾細胞を幼若成虫抗原と共にin vitroで培養すると、好酸球産生刺戟因子をメジウム中に遊離,放出する。この因子は分子量1万以上の非透析性の物質である。骨髄液体培養で検索する限り、幼若成虫の体抗原や排泄物・分泌物は単独では好酸球産生刺戟活性を示さないが、現在、軟寒天培養法によってもこれを検索中である。4.髄液の細胞増多と好酸球増多は第3期幼虫を感染させたマウスでも認められ、それはT細胞依存性であった。この髄液の好酸球増多に一致して、脳からの虫体回収数が急激に減少することから、好酸球は虫体殺滅に関与している可能性がある。髄液の好酸球を電顕的に観察すると、脱顆粒像,顆粒数の減少,顆粒の小型化,円形化,その他機能の活性化を示唆する変化が認められた。髄液好酸球はPMAやdigitoninの刺戟で【O(^ー_2)】を生成する。幼若成虫抗原も【O(^ー_2)】産生を刺戟する可能性を示唆する成績を得ているが、現在尚、検討中である。今後はラットではT細胞が存在するにもかかわらず何故髄液の好酸球増多が起らないか、の分子レベルでの解析が必要である。
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