Type Aの異常症患者の家系調査では第1の家系では発端者が37才の男性で高インスリン血症を呈し、赤血球、トランスフォームしたリンパ球ならびに線維芽細胞にてのインスリンレセプターは著明に減少しており、またインスリン作用もインスリン低濃度にて著明に低下していた。この患者の妹及び母親も同様の高インスリン血症とインスリン結合の低下を示し、父は糖尿病であるがレセプターには異常なく、このType Aのレセプター異常は母親を介しての遺伝と考えた。第2の家系では20才の女性が発端者で高インスリン血症と赤血球及びトランスフォームしたリンパ球でのインスリン・レセプターは著明に減少していた。同様の所見が母親にもみられたが、弟には高インスリン血症はみられたがトランスフォームしたリンパ球では正常といわゆるTypeCのインスリンレセプター異常症のカテゴリーに入り、また祖母及び父は正常であった。第2の家系ではこのようにTypeAとTypeCが混在し、その成因の遺伝型式に複雑さをうかがわせた。第3の家系では発端者が6才の男児でRabson-Meudeuhall症候群の亜型と考えられたが、機能的分類からはいわゆるTypeAに属し、その弟及び母親にも同様のレセプター異常を認めたが父親には正常と認められた。第4のTypeAの家系でも姉妹に認められたレセプター異常は母親でも認め、母親を通しての異常の遺伝と考えられた。第1及び第3の家系でのインスリンレセプター遺伝子のprobeを使用してのmRNAの測定では正常とほぼ同様であり、レセプターのmRNAの安定性、プロレセプターから以後の成熟の異常等が考えられた。またインスリンレセプター異常の線維芽細胞を利用して、インスリン及びIGF-1の作用を検討したところ、それぞれのレセプターを通じて糖輸送及びアミノ酸輸送を亢進させていること、また、DNA合成はIGF-1のレセプターを通じていることが明らかとなった。
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