研究概要 |
歯肉溝浸出液に含まれる蛋白成分についてアガロース等電点電気泳動により、アンホラインpH3.5〜9.5を用い銀染色で染色すると35本のバンドに鮮明に分画された。免疫法で10個の蛋白を固定することが出来た。健康歯肉と歯肉炎,歯周炎患者歯肉とを比較してみると、症状が悪化するほどバンドの本数がふえ、特にpH6.6付近およびpH8〜9付近で出現した。アルカリ側で増量するのは免疫グロブリンであることがわかった。更に高速液体クロマトグラフィーによる分画を試みたところ、12個の蛋白ピークに分画分取され、また再現性も非常に優れているので、各蛋白の解析をしていく上に有用な手段を確立したと考えている。 水素イオン感受性電解効果トランジスタ電極を用いて歯肉炎患者の歯周ポケット内pHを測定したところ、健常者の歯肉溝内pHと比較して低値を示し、特に舌側においては6.79±0.39(平均値±標準偏差)に対し、6.44±0.48とp>0.05で有意に低値であることがわかった。歯肉溝においては浸出液量の増加に伴いpHが上昇するが、歯周ポケット頬側,隣接面部では液量に関係なくpHは一定で、一方舌側では、増加に伴いpHの低下が認められるという傾向をつかんだ。歯肉溝浸出液中に含まれる酵素、LDHとそのアイソザイム,β-グルクロニダーゼを測定したところ、LDHは炎症程度が高いほど増加傾向にあったが、アイソザイム分画はいずれもLD【H_5】が主分画でありパターンの変化はみられなかった。β-グルクロニダーゼはLDHについでその炎症程度を反映した。 臨床的には下顎遊離端欠損患者を用い、一側には非緩圧型即ちコーヌステレスコープデンチャー,対側には緩圧型即ちミニダルボアタッチメント義歯の吸収状態をみたところ、緩圧型の方が支台歯の動揺が大きく、また歯槽骨の吸収が大きくなる傾向を示した。
|