1.カナマイシン耐性遺伝子について カナマイシン生産菌であるStreptomyces kanamyceticusよりクローニングしたカナマイシン耐性遺伝子は、標的であるリボソーム30Sの修飾をもたらすものであることが示された。カナマイシン生産菌における自己耐性機構はこれまでアセチル化酵素によると考えられてきた。我々はカナマイシン生産とリボソームの耐性とが同一の発現調節を受けており、アセチル化酵素の発現調節とは必らずしも一致しないことなどを明らかにすることにより、自己耐性が主に30Sサブユニットの変化によるものであることを示した。 また本耐性遺伝子は生産菌においては誘導的であるのに対し、多コピーブラスミドにクローニングされたS.lividansなどの宿主菌では構成的に発現していた。この発現調節が転写レベルであること、生産菌と宿主菌では転写開始点が異なることが示された。今後、カナマイシン生産の調節機構の解析へと発展させる為の実験系が確立されたと考えられる。 2.ペニシリナーゼ遺伝子について ベルギーのGhaysenらによりクローニングされたS.cacaoiaペニシリナーゼの最小必須領域を決定した。このDNA断片の塩基配列決定を行ない、分子量から推定される大きさのopen reading frameを同定した。このopen reading frame中には他のバクテリアからのペニシリナーゼと共通のアミノ酸配列が観察された。 SIマッピングとプロモータープローブベクターによるプロモーター部位の同定を行なった。
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