このテーマでアフリカの憲法の研究をするには、つぎの三つの正しい認識が必要である。第一に第三世界という言葉の正しい認識、第二にアフリカの現実の正しい認識、そして第三にアフリカ諸国の憲法の正しい認識である。 アフリカのほとんどの国は第二次大戦後の民族自決の確立のもとで、独立した国である。しかしサハラ以南の最初に独立したガーナの憲法をはじめ、彼らが制定した憲法の特徴は、第一に先進国の憲法の模倣であった。そして第二は植民地時代の法秩序の継承であった。だから、憲法の多くは宗主国であったフランスやイギリスなどの植民地ごとに類型化されたものであった。自治国憲法を排したのちに、制定された現在の共和制憲法の構造パターンは第一に議会制が弱く、第二に大統領制の強化と一党制によって中央集権的であることである。アフリカでは国民の識字率が低く、部族の対立があって民衆の声を同家的な規模で政治に反映できず、憲法の原理が政治に反映することが難しい。また、80年代までに多くの国にクーデターがおこり、憲法政治は混迷を深めている。第三世界の政治・社会状況に共通しているのは、経済的貧困と識字率の低いことに原因した混乱である。アフリカのほとんどの国も、貧困であるので、経済破綻からクーデターがおこりやすく、その結果は社会主義国家への指向がつよい。しかし、実際には社会主義政策を実践することはむづかしい。 このようにアフリカにおける憲法政治をみてみると、アフリカの憲法政治には第三世界における、その他の国ぐにの憲法政治のモデルとなる部分と、アフリカに特有の憲法政治の現状があることを理解することができる。 本研究は、以上のことを十分認識してアフリカの憲法政治の現状を考察したものである。
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