研究概要 |
両生類の初期原腸胚の予定外胚葉に筋肉や脊索などの器官を分化誘導する物質の分離・精製がなされた。フナの鰾から8M尿素抽出,等電点法,ConAを用いたアフィニティ法,電気泳動法,HPLC法など生化学的方法によって、現時点で最も高純度化した誘導物質分画(GI,G4およびH4)を得ることができた。HPLCやSDS・PAGE法によってこれらの物質が非常に精製されており、この分画は主としてタンパク質でできており、他に一部、グルコースとキシロースの糖成分も含まれているので、この中胚葉性分化誘導物質は糖タンパク質と考えられる。上記のような中胚葉性分化誘導物質が未分化細胞に筋肉や脊索などの中胚葉性器官の組織分化をおこすことはわかっているが、物質レベルにおいて正常発生と同じような物質の合成やタンパク質合成がおこなわれているかが確められた。その結果、二次元電気泳動法によって調べると対照としての予定外胚葉やγ-グロブリンなどの未分化細胞では約50個ぐらいのタンパク質のスポットが検出されるのに対して誘導物質を与えてサンドウイッチを行った外植体では約85個のスポットが検出され、少くとも約23個の新しいタンパク質が合成されていることがわかった。つぎにFITCを用いた間接蛍光抗体法によってこれらの系での筋肉分化の検出がなされた。8種類の筋肉抗体のうちイモリ胚ではトロポミオシン,ミオシン,C-タンパク質のみが幼生の筋肉を特異的に蛍光染色することがわかった。これら3種類の筋肉特異的に蛍光をもつFITC結合の抗体を用いてサンドウイッチの外植体を調べた。その結果、対照の外植体ではまったく分化も蛍光も見られなかったのに対して、誘導物質を与えた外植体では単に組織学的な分化誘導のみならず、筋肉分化しているところと一致してその部分にのみ強い蛍光がみられた。このことはミオシンなどの物質が新しく合成されていることを示している。
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