研究概要 |
本研究では精子の卵細胞認織機構の解明を目的として、マウス透明帯糖タンパク質のリセプター機能および糖鎖の解析を行った。分離精製した糖タンパク質をラテックスビーズ上に固定化し、精子結合活性を調べたところ、従来精子リセプター活性を持つといわれていたZP-3にもっとも強い結合活性が認められた。しかし、精子のどのような成分がZP-3と結合するかを確認することは出来なかった。 透明帯の精子リセプター活性は糖タンパク質糖鎖が担っていると推定されているので、機能的な違いを反映して、糖タンパク質間に糖鎖の違いがあることが予想される。アイソトープ標識した糖鎖のゲル濾過分析を行った。透明帯糖タンパク質(ZP-1,ZP-2,ZP-3)の含む糖鎖は二群に分けられるが、糖の含量及び二群の糖鎖の割合は糖タンパク質間で異なっていた。このうちO型糖鎖と推定される小さいオリゴ糖のゲル濾過パターンは糖タンパク質間で差がなかった。N型糖鎖である大きなオリゴ糖のゲル濾過パターンは糖タンパク質間で微妙に異なり、糖タンパク質間での違いを思わせる。この糖鎖はシアリダーゼに反応しない電荷を持ち、またN-アセチルガラクトサミンを成分とする通常とは異なった糖鎖であった。この様に透明帯糖タンパク質に含まれる糖鎖の概要,特徴を知ることができたが、最初の予想とは異なり、糖タンパク質間での大きな違いを見つけることはできなかった。しかし未受精卵,二細胞胚透明帯糖タンパク質の比較から、精子結合に関与すると思われるZP-3に糖鎖の変化を検出することができ、精子リセプター構造を知る手がかりが得られた。今後は糖鎖の標識法の再検討,レクチン,糖鎖抗体あるいはオリゴ糖の精子への結合等を利用した糖鎖の分画法の検討など更に詳しい糖鎖解析が必要であり、この様な解析を通じて精子卵子認識機構の解明がもたらされると考える。
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