複断面河道の合成粗度の増加は、主に低水路と高水敷の速度差から生じる水平混合が原因である。そこで、河川のように鉛直方向に強い剪断を受けている場の水平混合特性を実験的に検討した。実験対象は次の3種の流れとした、(1)平行合流、(2)障害物背後の流れ、(3)河岸沿いの側方境界層。その結果、上記の場における水平混合の特性は自由乱流のそれに類似しており、代表速度差と混合層厚を用いた水平渦拡散係数を用いて水平剪断力を表示できることが明らかとなった。そこでこの表示式と浅水流方程式を連立して、開水路の水平剪断流の速度分布と合成粗度を推算する手法を導いた。 実際の河川では、低水路と高水敷の境界に潅木が成育していることが多く、上記の成果を現地に適用するには潅木の抵抗特性を知る必要がある。そこで利根川130K〜140Kにおいて現地観測を行い、潅木の構造、強度、流水抵抗の関係を調べた。また実験水路中に潅木モデルを設置して実験を行い、潅木の揺動が水平混合に及ぼす効果を調べた。その結果、潅木群から周期的に流水塊が放出され周囲水と混合する現象が生じ、合成粗度を増加させることが明らかとなった。この現象は昭和56年の利根川洪水において航空写真にみられた水面上のパターンに極めて類似している。 低水路河岸の安定性には、上記の事項の他に横断方向の流れ(2次流)の強度が関係する。そこで2次流強度を評価するための計算手法についても検討した。2次流を含む流れは本質的には3次元だが、現段階では計算機容量の制約などから、河川流の完全に3次元的計算は困難なことが多い。そこで本研究では鉛直方向に重み付き残差法を使い水平方向に差分法を用いる準3次元計算法を開発した。 以上得られた知見を総合して、個々の複断面河道の条件に対して合成粗度と河岸安定性の検討を可能とした。
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