降水の循環過程において地面からの水の蒸発は、特に乾燥・半乾燥地域において、一つの境界条件となる極めて重要な現象である。この現象は気象条件と土地条件が複雑にからみ合って生起しているので、蒸発に関与するこれらの諸要素の役割の分析・解析を困難にしている。本研究は、風洞実験によってこれらの適当な要素を固定することにより、裸地での蒸発機構の解明を計ったものである。実験方法は、重量計上に設置した地下水面を有する一様な多孔質層の表面に、温度、湿度、風速が一定な気流を長時間風洞を介して与え続けるといったものであり、地下水面は実験開始時には層表面にほぼ一致している。対象とした多孔質層は4種類で、2種類の砂(平均粒径(d)は0.22mm、0.45mm)、赤玉土d=3mm)、一様なガラス玉(d=12mm)よりなり、また気流条件として風速のみが数種類変えられた。以上の実験とその解析で得られた主要な成果を示すと次の通りである。 1)実験の比較的初期段階では、蒸発強度や地下水面の降下速度は風が強い程、また場の空隙径が小さなもの程大きくなるが、時間とともに風速の大きさのこれらに対する影響は、空隙径の大きなガラス玉の場合を除外してなくなる。なお赤玉土はmacnoporeとmicroporeを有するが、それぞれは主として地下水面の変化及び蒸発強度に関与する。 2)地下水面が比較的高い段階では、気流の摩擦速度で除した蒸発強度は、風速に無関係に地下水面の深さに対して一意的にほぼ決る。 3)地下水面上の不飽和域の水分分布は、特に乾燥した部分を除外して、土壌水分特性曲線で近似できる。 4)蒸発面は時間とともに層表面より下方へと移動する。 5)蒸発面上方の多孔質内の水蒸気輸送は分子拡散と乱流拡散によりなされるが、特に層表面近くでは後者の寄与が著しく大きい。空隙径の大きなガラス玉の場合、乱流拡散での混合距離は粒径の半分程度の大きさとなる。
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