研究概要 |
我が国の中高層ビル構法として、鉄骨鉄筋コンクリートあるいは合成ばり等の鋼・コンクリート合成構造系は、一般に最も靭性に富む構法と信じられ、その豊富な靭性の故に最も耐震性に富む構法のひとつと信じられてきた。ところが最近その最も一般的な柱貫通型柱・梁接合部に於て、地震荷重を模した正員交番繰り返し曲げ載荷の結果、コンクリートの補剛作用のため鉄骨梁端が、塑性率わづか3程度の変形振幅に於て、脆性破壊を起すことが判明した。本研究ではT形の鉄骨鉄筋コンクリート、あるいは合成ばり柱・梁接合部供試体の柱部分を(載荷床版上に)固定し、梁端部に定変位振幅正員交番繰り返し曲げ変形を加えることにより、その低サイクル疲労破壊限界を実験的に求めることにより解明をはかった。実験にはすべて柱160×380梁160×230柱梁の鉄骨はロールH150×75×5×7(SS41)で統一し、接合部の種類により梁貫通型(C・Butt),柱貫通型スカラップなし(B・Butt),柱貫通型スカラップ付(B・ButtSc),鉄筋コンクリートスラグ付鉄骨合ばり(Comp.B・Butt.Sc),さらに比較用として鉄骨柱貫通型スカラップ付(S・B-Butt.Sc)及び鉄筋コンクリート(RC)をそれぞれ種々の定変位振幅値に対して定変位振幅交番繰り返し曲げ試験を行い比較検討した。その結果の変位振幅(【R_a】)-破断サイクル数【N_B】関係は、どの接合方法も両対数軸上ほぼ直線関係を示すが、鉄骨母材が破断する梁貫通型が最も靭性に富むのは当然として、本研究の目標とする柱貫通型では、スカラップなしのものでも可成りの靭性低下を、そしてスカラップ付のものではさらに蓉るしい靭性の低下が示された。スカラップは鉄骨の溶接施工上不可避のものとされてきたが、本研究結果の示すところにによれば、スカラップの存在自体が靭性低下の主要因であることを考慮し、スカラップ自体についても検討を加える必要がある事、さらに中高層ビル構法の主流をなす慣用構法の設計施工に、慎重な検討と配慮の必要性が判明した。
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