本研究は高温治金反応に関与する気体蒸気の同定を、その一部を、ノズル-スキマーを用いる高速分子線サンプリング法により質量分析器のある高真空中に導入し、これを迅速に、定性、定量的に分析する方法を開発し確立を計ろうとするものである。そのために、既存の装置に、次に述べるような装置の改良をくわえ、各種の測定を行った。 (1)チョッパーシステム(チョッパー、駆動装置、モーター、電流/電圧変換器、参照信号検出器、ロックインアンプ)の装置への組み込み及び分析におけるその使用。このシステムによりバックグラウンドのノイズ等の低減化、分析感度の向上、精度の向上、等が計られ、特に感度は約100倍程度に改善された。 (2)システムの排気系の改善およびサンプリングの改良。排気系の改善は質量分析器のあるチェインバーの排気ポンプを大容量の物に変えることにより行った。また、サンプリングの改良は、スキマーの位置関係、形状等を、過去の研究から見直しを行い、改善した。 (3)定量分析の為に、組成の既知の混合不活性ガスを用いて、温度、組成、流速等を、パラメーターとして、高速分子線サンプリング時における質量分離の現象の定量的な尺度である質量分離係数として実験的に求めた。 (4)金属硫化物の蒸気種、蒸気圧の測定。チョッパーシステム等の改良を加えた装置を用いて、亜鉛、硫化亜鉛、硫化錫、硫化ゲルマニウムの蒸気種、蒸気圧の測定を、気体輸送法的に行った。測定結果はこれまでの文献値と良い一致をみた。 (5)この改良した装置の温度の使用限界は、反応部が石英製である為に、約1000Cであり、凝縮性の気体の検出濃度は約10ppmから1pct程度であることが判明した。
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