施業方式の異なる現実林分間で、林の取り扱い方や誘導の仕方の違いが単木の生長量、並びに材質指標としての材の外観的特性、組織・構造上の特性、および力学的特性等にどの程度の変化をもたらすものか、その法則性を明らかにしようとした。その材料として、四国内の代表的スギ人工林の3地域(久万・木頭・安芸)から6林分を選んだ。それぞれの林分から標準木を全体で36本抽出し、試験材とした。その分析結果は次のようであった。 1)年輪幅の施業地間の壮齢林分の比較では、胸高位置の最近3ケ年の平均において、木頭と他地域間に1%の有意差があり、若齢林では、久万と木頭の間に5%の有意な差が認められた。 2)上記年齢幅の施業地間の差を林分密度で対応させると、とくにha当り胸高断面積の低かった木頭が現在もよい生長を示していた。 3)材の外観的特性としての節枝については、久万の若齢林に枝打ちが最近に施されているがその効果はこれからであり、生長の良かった木頭が、生節枝・死節枝の長さが他地域より長かった。また、心材、辺材では、心材直径は産地にかかわりなく丸太径と正の高い相関が認められ、心材があらわれる直径は、約7cmであった。辺材幅は、生長が旺盛であれば広くなる。 4)組織・構造的性質としての仮道管長は、未成熟材、成熟材ともに生長の良いものほど長い仮道管長が得られる。 5)物理的性質としての容積密度数にあたえる最も重要な因子は、晩材率であった。容積密度数と年輪幅あるいは年輪幅と晩材率との間には負の相関が認められた。材の力学的性質については、曲げヤング率、曲げ強さおよび圧縮強さを調べた結果、いずれも容積密度数との相関が高かった。しかし、曲げヤング率は木頭の幼齢林が比重の割に高い値を示した。
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