研究概要 |
フトツノザメは成長,繁殖,食性を検討した。成長については銚子産,小笠原産,ハンコック海山産に違いがみられた。どの海域も雄の方が雌よりも成長が悪かった。性成熟の大きさも海域間で異なり、雌雄とも銚子産,小笠原産,ハンコック海山産の順となった。成熟年齢も同様に雌雄ともにこの順となった。交尾器長も精巣重量は性成熟の開始と共に急激に増大した。1腹あたりの胎仔数と大型卵巣卵数は親の大きさと共に増加した。成熟の大きさが異なるため、胎仔数と卵数は海域間で異なるが、種としての統一性は保持されているものと推測された。平均大型卵数は胎仔数よりも少なかった。食性についてみると、どの海域でも魚類の出現が高く、次いで頭足類,甲殻類の順となった。しかし、出現種が海域間で異なるため選択性は小さかった。 小型ツノザメ類は銚子産の繁殖と食性を調べた。性成熟の大きさや最大体長は雌の方がかなり大きく、性差が著しかった。みかけの胎仔数よりも大型卵巣卵の方が実際の胎仔数を正確に反映していると判断された。胎仔の体長組成,卵径組成から判断して特定の繁殖周期はないものと推測された。食性については3種とも空胃率が著しく高いのが特徴であった。また、胃内容物重量の体重に対する割合はほとんどの場合3%以下であった。3種ともにイカ類と魚類の出現率が高かった。 トラザメとニホンヤモリザメは銚子産の繁殖と食性を調べた。成熟の大きさと最大全長は雌雄でほとんど差がみられなかった。トラザメは周年卵殻をもつ雌が存在することから特定の繁殖周期はないものと推測された。2種とも空胃率はきわめて低かった。餌生物に大きな分類単位では重なりは認められるが、組成比が大きく異なること、また下位の分類単位で出現する餌生物が異なるので、両種は食い分けをしているものと推察された。
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