研究概要 |
高IgE症候群は、高IgE血症,反復感染,慢性皮膚炎または湿疹を三主徴とする原発性免疫不全症であるが、その本質的病因は解見されていない、今回私達は3年間の本研究においては下のことを明らかにした。 私達の6症例の検討で、皮膚病変は病理組織学的に通常のアトピー性皮膚炎と同じである。全例にin vivoにおける好中球走化能低下がみられる。invitroのIgE産生における実験で、抑制性T細胞の機能異常が高IgE血症の原因と考えられる。さらに全国40例の集計および外国文献との比較では、人種差,地域差がない。男女比は2:1で男に多い。起点菌としてはほぼ全例に黄色ブドウ球菌が検出される。好中球走化態は、全例に低下しているものの時期によって一定せず、in vivoにおけるskin window testは正常であるなど好中球の原発的異常は考え難い、外国症例ではあまりみられないが、本邦例では約40%に気管支喘息や鼻炎などの主要アレルギー疾患を合併する。特異的IgE抗体をみると、ブ菌に対するIgE抗体が検出され、その他通常のアレルギー疾患で頻度の高いアレルゲンが認められる。反復するブ菌感染に関して、ブ菌wood46株(プロテインA非産生株)を用いてブ菌特異刺激によるインターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)の産生と、IL-2に対する反応性をみた。IL-1では異常がみられず、ブ菌特異的IL-2産生および反応性の低下を認めた。以上をまとめると、高IgE症候群においては、主としてTリンパ球の機能異常によりIL-2の産生と反応性の低下があり、ブ菌特異的防御機構が成立し難くブ菌感染を反復する。その上アレルゲンとしてのブ菌に対するIgE抗体の産生がおこり、抑制性T細胞の機能異常によりIgEの産生増加をおこし、血中IgEが高値となる。すなわち、ブ菌アレルギーの状態を呈することと、ブ菌特異的防御機構不全が本症候群の病因病態であろう。
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