研究概要 |
培養B-16メラノーマ細胞を用いて、細胞膜の情報伝達に関する応答をホスホリパーゼの活性化を中心に検討を進めた。細胞膜刺激として東芝FL20SE30ランプを用い、細胞の生存率に影響のない最大エネルギー量である1.6×【10^6】erg/【cm^2】量で15分間行った。B-16メラノーマ細胞から照射後速やかにアラキドン酸の遊離がおこり、この遊離はホスホリパーゼ阻害剤のメパクリン及びカルモジュリン阻害剤のW7により抑制された。また細胞外液の【Ca^(2+)】濃度を5,20μM,1,2mMと変化させると5μMの場合のみアラキドン酸の遊離が抑制された。他の濃度ではほぼ同レベルの遊離が認められた。更に6μMのEGTA添加で【Ca^(2+)】をキレートするとアラキドン酸の遊離が抑制された。一方、B-16メラノーマ細胞の【Ca^(2+)】依存性ホスホリパーゼ活性を測定すると【A_2】,C活性が証明された。また、プロスタグランジン産生能は、【PGD_2】が最も高く、【PGE_2】、【TxB_2】、【PGF_(2α)】、6Keto【PG_(1α)】の産生も認められた。この如く、アラキドン酸の遊離をみた細胞膜流動性を、スピンラベル法により検討を如えた。その結果、膜流動性は照射直後に抵下し、6時間後に上昇する2相性がみられ、特に燐脂質アシル鎖の二重結合が豊富な12-DSAにおいて最大であった。過酸化脂質量も流動性の変化と平行して推移し、過酸化脂質生成は主に12DSA領域で流動性が低下することを明らかにした。 以上の結果から、紫外線刺激によりB-16メラノーマ細胞の細胞膜に過酸化を生じ、これが流動性などの膜動態に変化をあたえ、【Ca^(2+)】の細胞膜透過性を変化させて細胞内への流入を生じ、ホスホリパーゼ【A_2】の活性化を生ずる可能性が示唆された。これらの膜応答がメラニン生成に如何に結び付くかは、今後の新らたな課題をあろう。
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