研究概要 |
昭和61年度が最終年度であり、研究成果のまとめと、松果体の生理、生化学および脳代謝に関する最新の知見を集収し、これに基づいて研究成果の考察を行った。 (1)ウレタン麻酔下にラット両側上頸神経節々前線維を切断したあと、一側節前線維のパルス電気刺激(15HZ,0.5msec,20μA)を行い、松果体、視床下部その他の脳内77部位において、局所脳グルコース代謝率を【^(14)C】デオキシグルコース法を用いて測定した。(2)局所脳グルコース代謝率は対照群の77個所のいずれの部位においても左右差は認めなかったため、対照群の左右の平均値をとり、これと刺激群の刺激側あるいは非刺激側とを各々比較検討した。(3)刺激側の上頸神経節におけるグルコース代謝率は95%の増加を示した。松果体の代謝率は対照群(56±4μmolcs/100g/min)に比較して刺激群(96±8μmolcs/100g/min)で71%の増加を示した。他の76脳内部位における代謝率は、刺激側と非刺激側の各部位の代謝率の間にも有意差を認めなかった。(4)オートラジオグラムを米国N【I】Hソコロフ研究室の協力を得て、カラーオートラジオグラムとして定量画像化した。(5)本研究における松果体代謝率上昇は、上頸神経節の電気刺激は生理的な刺激として作用して松果体の電気活動を増加させ、N-acetuR-transferase活性やcyclicAMP濃度の増加を惹起する等の報告(Brooks〓,Hydorns)に対応するものと考えられた。(6)松果体破壊の局所脳グルコース代謝に及ぼす影響を検討すべく 松果体切除を手術用顕微鏡下に試みている。しかし、ラット松果体は静脈洞交会の直下に静脈洞硬膜と喩着して存在するので、切除術の際、静脈洞損傷や脳損傷が発生し、これが局所脳代謝に影響を及ぼすことがわかり、この動物手術に改良、工夫を必要とすることが判明した。
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