研究概要 |
前年度に引き続き、人為的歯の移動を前歯に施したウィスター系ラット雄体重約300gの頬側歯頚部歯周組織を用いて器官培養を行った。培養条件等はすべて初年度に行った系で統一した。先ず予備実験として【^3H】-チミジンのDNAへの取り込み実験の結果ラットの歯周組織は死骨に比べ【^3H】-チミジンの取り込み量が多かった。そこで本実験として、前年度と同様の方法で【^(45)Ca】のリリースを測定した。人為的歯の移動期間を1,6時間,1,3,5,7日とし、静置培養及び回転培養を行った。また、断頭10分前のラットに非ステロイド系抗炎症薬(ヴェノピリン)を静脈内注射したりして、その変化を対照群と比べたが、いずれも有意差は出なかった。さらに摘出部位をWaldo法を施した臼歯に変えたり、臼歯と前歯を同時に同一の培養液中に加えて培養を行ったりしたが、やはり対照群との有意差は見い出せなかった。そこで前年度の報告における第2の方法、すなわち組織を摘出後直ちに液体窒素にて凍結割断し粉末状とし、その脂質、あるいは蛋白を抽出して培養液中に添加して骨吸収能を測定したが、この方法においても対照群との有意差は出なかった。対照群と人為的歯の移動群との間に統計学的な有意差が見い出されなかった原因として(1).矯正刺激という局所に限定した炎症性反応では、おそらく微量のケミカルメディエーターしか関与しておらず、検知できる水準に達し得ない。(2).組織摘出時の機械的刺激が強く他の因子の影響が検知できない。(3).骨,歯根膜,歯など種々の組織から成る歯周組織の器官培養の方法についてはまだいくつかの問題点を残しており、その問題点を1つずつ解決していく必要がある。などがあげられる。これらを検出するには免疫組織化学的な方法の導入の必要性が考えられる。
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