歩行獲得後の乳幼児が、日常的環境や目新しい場面で、どのような移動行動をおこなうかを、移動域・移動量・移動速度などについて定量化し、同時にそれらの指標がどのような条件で変容するかをみた。移動行動の記録には、本研究用に漸次改良化された"超音波式移動位置検出装置"(locomotion locator;竹井機器)を適用した.結果から、1)月令とともに移動行動の量的指標は増加する、2)移動域内にはいくつかの停留点(基地)がある、3)最も停留時間・停留頻度の高い場所は、母(父)親またはその周辺である、4)玩具箱・家具・親以外の成人の周辺にも停留点があらわれる、5)入室後の時間軸に応じて移動域は漸増し、新たな停留点や方向が現れる。6)移動行動は年長のきょうだいの存在によって促進され、みしらぬ同輩の存在によって抑制される、7)親(基地)からの離隔行動と接近行動には差があるなど観察された。また観察結果から、乳幼児の移動行動の発達は、たんに運動機能の発達だけでなく、遊びの能力・社会性・空間図式の形成など他の発達指標と密接に関連していることが推察された。
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