研究概要 |
昭和59年度においては、附属小学校,中学校において95の授業のビデオ記録を各教室2台以上のカメラでとり、かつ学習意欲の評定を生徒にさせ、事前・事後テストを実施した。授業記録は、教授学習過程についての16項目からなるカテゴリ・システムによって分析され、授業ごとに各行動カテゴリの生ずる比率が計算され、授業評定(学習意欲の尺度)と合わせて、相関関係が計算された。結果として、教師の授業中の賞罰などの行動と生徒の学習意欲の間に正の関連が見いだされた。また、それらの教師の行動は、生徒の挙手などの授業における積極的行動を多くし、あくびなど不快な表情を少なくすることが認められた。つまり、賞罰などの教師の行動が、授業を活生化し、生徒の学習意欲を高めてるものと考えられる。 前年度の研究では認知的スキルについて十分明らかにできなかったので、60年度では、附属小・中学校において、61年度においては主に公立の小・中学校で教授法を比較する実験授業を行った。学習意欲を高める条件として授業課題の設定法が検討され、学習課題を学習者に決定させる自己決定群,いくつかの課題から選択させる自己選択群,教師が決定する教師決定群(説明群),このほか低学年では具体物を操作させる操作群が加えられた。学習意欲についていえば、自己決定群や自己選択群が高いが、概して事後テストの成績は低く、教師決定群は学習意欲は低いが、事後テストの成績は良い。ただし、例外もあり、今後の検討を要する。また、具体物の操作をさせることは、学習意欲を高めるが、これも学習成績を高めることとは必ずしもつながらない。授業において学習意欲を高め、かつよい成績を維持するためには、生徒の学習の適当な統制が必要であろう。なお、学習適性検査が実施され、教授法と適性処遇交互作用が検討されたが、学習意欲という点では、特に明確な証拠は得られなかった。
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