研究概要 |
福井大学では昭和57年度より教育実習事前学習をカリキュラム化し、全学生にマイクロティーチングを行うなど、教授スキル学習のため種々の試みを行ってきたが、本研究ではこれらのカリキュラムを改善し、授業観察能力を育成するためにはどのような手だてが必要でああるかを検討し、またそれに必要なテキストの試作も行い、実際に使用し、実践的にその有効性を検証した。また、学生の発問応答の向上の評価には、その評価システムが必要である。発問応答の評価のカテゴリーシステムとしてはBIAS,OSIA,フランダース等のものがあるが、これらは授業3秒あるいは5秒毎に区切ってゆくもので、その操作にはかなりの労力と熟練とが必要である。実習生に簡易に使用できるカテゴリーシステムがあってもよいと考え、「件数だけを数える簡易なカテゴリーシステム」の作り、授業の評価と分析に使用した。発問応答には、コミュニケーションの側面からみるのではなく、指導計画との関係,教材の適否,山場のもりあげ方等、多面的にみることも必要である。こうした多面的で巨視的な把握を可能にし、実習生のような初心者にもわかりやすく授業をとらえることを可能とする授業評価表を開発し、それを用いて、マイクロティーチングをくりかえし観察させたところ、くりかえす毎に授業観察能力に一定の向上がみられることが数量的にも明らかになった。これはマイクロティーチングの役割が単なる教授スキルの断片的習得だけではなく、もっと大きな実践的意義をもつことを示すもので、授業研究の上できわめて高く評価されてよいと考えている。これらの研究の成果は学会でも認められ、日本教育工学雑誌から「教育実習事前学習プログラムの開発とマイイクロティーチングの改善」(400字50枚)として学術論文化するよう依頼され、その執筆を終え、近く掲載される予定である。
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