研究分担者 |
門倉 武夫 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (10000457)
見城 敏子 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 室長 (90000455)
増田 勝彦 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (40099924)
樋口 清治 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (00088791)
江本 義理 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 部長 (40000442)
HIGUCHI Seiji Head of 3rd Section, Department of Restoration Techniques
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研究概要 |
文化財の中で彩色を施している建築部材,障壁画,美術工芸品等の遺品は多く、その退色劣化防止と剥落止めは重要な保存対策である。このため劣化程度の診断の調査方法や、それに対応する処置法などを研究するものである。(1)顔料劣化の基礎研究として顔料のX線回折チャートの作成を行い、その標準チャートを作成した。(2)斜光線照明装置を製造した。大画面においても均一な斜光照明により画面上いかなる点においても照明光の入角が一定になるため、光源からの距離に関係なく画面につくる影により正確な凹凸部を記録することができる装置を開発した。この装置の応用により、画面における彩色状況の客観的な記述が可能となり、基礎的記録作成に資することができる。この応用として江戸時代の芝居絵絵馬の修復前後を撮影し、剥離部、歪みの記録、損傷部分の客観的な記録分布図の作成が可能となった。(3)膠や各種合成樹脂を接着剤とした丹彩色について、各種試験片を作成してマウエザーメーターで劣化促進試験を行い、膠量における層状剥離限界が求められ、樹脂濃度の高いものの耐久性が実証された。(4)青色岩料の岩群青、新岩群青、藍などの耐候試験を行った結果その相違が判明し、藍が有効であることを確認した。(5)三千本、鹿、兎など各種膠の中のハイドロキシプロリンに着目し、アミノ酸分析法によりその含有量からそれぞれの膠を同定することが可能になった。(6)妙義神社総門,浅間神社,霊山寺三重塔,吉野水分神社本殿,興福寺三重塔などの建築彩色,岡山県博彩色華鬘,知積院障壁画などの彩色剥落止処置後の現状を調査し、その後の保存環境による影響変化を調査して処置の有効性を確認し、再処置についての示唆を得た。近世の泥下地彩色像は、全く未処置の分野であるが、合成樹脂の接着応用により修復処置の可能性を組立てつつある。これら研究成果の総まとめを行う。
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