1 研究目的:いつどこに出現するかわからない天体を捜すためには、広い視野を持った電波望遠鏡が必要になる。実用機としては2次元に64×64=4096個の小型アンテナを配列して、数十MHzで2次元のFFT演算を並列的に行う。これは単一のパラボラアンテナ4096台分の働きをし、1週間で全天を捜天できる。本研究を含む一連の研究は、8素子1次元のパイロット システムで、規模のみ実用機とことなる完全なテストおよび開発を行う事を目的としている。 2 研究の特徴と海外の動向:このプロジェクトでは多数の低雑音受信機と高速ディジタル乗算器を使用する。このぶん野でわが国の技術水準は世界のトップレベルにある。このことはわが国における広視野電波パトロールカメラ建設の極めて有利な条件である。 次に海外の動向についてのべる。外国の大学に何年か留学して技術を学び、日本で改良版をつくりあげて海外の権威に認めてもらう。これがわが国のこれまでの研究スタイルの主流であった。しかし技術摩擦の影響で、これからはこうはいかなくなる。この点にかんして、本研究のスタイルは非主流であり非伝統的である。即ち、着想から技術開発まですべてわが国でなされたものである。従って海外に比較の対象となる観測装置は無い。一方、海外の本計画に対する関心はつよい。本計画はSky and Telescope誌に紹介された。IAU/URSIシンポジウムではオーストラリアの電波天文研究者達が南天も観測するのか、と強い関心をしめしていた。 3 本研究の成果と今後の展望:FFTプロセッサーを使ってディジタル レンズを作り、ビーム パターンをえることができた。ディジタル素子の利点は、8素子での実験を4096素子に拡張するにあたって何の不安も伴わないことである。 次のステップとして、現在ディジタル複素振幅イコライザーの開発計画をすすめている。これは今回の研究成果を基礎とし、無限に素子数の多い場合にも像合成を可能にするものである。
|