1.金属薄膜で被覆したp-n接合シリコン(Si)電極を用いた光電解セルによりヨウ化水素を分解し、太陽エネルギーを化学エネルギーに変換する研究をひきつづき行なった。昨年度は5nm厚のタングステンやモリブデン薄膜で被覆したSi電極が4700時間安定であることを報告したが、今年度は金属膜の光吸収による効率の低下を防ぐためその超薄膜化を試み、Si【O_2】薄膜形成後に金属薄膜で被覆し熱処理を行なうという方法を用いると1nm厚という超薄膜の被覆によっても5000時間以上安定な電極が得られることがわかり、これにより光電流は約1.5倍増大した。上述の光電解セルではSi電極上でヨウ素イオンが酸化される反応がおこるが、逆向きのn-p接合をもつSi電極では光水素発生反応がおこる。この場合についても研究を行ない、Si表面にマット・テクスチャー処理を施すと10.3%というこれまでの値より約30%も高い光化学変換効率が得られることがわかった。さらに、nip接合をもつアモルファス・Si電極が光水素発生反応用の電極として使用し得ることも明らかとなった。 2.流通型光電解セルの装置工学的問題を検討するために、陽イオン交換膜で隔離された陽極側と陰極側にそれぞれヨウ化水素と臭化水素の電解液を流して光電流を測定した。光電解セル内を流れる電流を支配する因子として、a)pn接合型半導体の内部および表面の物性、b)電解液による光の吸収、c)両電極間の液抵抗、d)陰極で発生した水素気泡の挙動、などが考えられる。これらの中でb)〜d)の効果を明らかにするために、1)光の強度、2)ヨウ化水素中の光の透過距離、3)光電解セルおよび電極の形状・寸法と傾斜角度、4)電解液の濃度と流動速度、5)両極間の印加電圧、などの実験条件を変えて電圧-電流曲線を測定した。その結果、効率のよい光電解セルを設計するために必要とされる基礎データと礎基式を得た。
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