研究代表者らは、20数年前より3d遷移金属化合物、特に酸化物、カルコゲン化物の研究を精力的に進めてきた。その際、高温における比熱測定の必要性を強く感じたが、市販の装置では満足な結果が得られなかった。特に、700℃以上では、比熱の絶対植をえることは困難であった。その上、我々の取り扱う試料は、空気中では不安定なため、密封容器(透明石英など)の中に入れて測定する必要があるため、なおさら測定は困難であった。そこで、本研究では密封した試料について、簡便かつ精度よく高温(出来得れば1000℃以上)迄の比熱測定が可能な装置の試作を目的とした。 本試作研究の基本装置は、差動熱量計であるが、その基本に戻って、測定原理の再検討、それに伴う装置の設計・改良がくり返された。この装置では、ベース・ラインの安定性と再現性が重要であるが、その理論的考察とその実験的検証に多くの時間が費された。また、装置は試料まわりの工作精度に左右されることが多く、何度となく手直しがくり返された。その結果、ほぼ、1000℃位までは、非常に注意深く測定すれば、比熱の絶対植の温度変化を測定することが出来るようになった。この装置は、簡便とはいい難いが、一応所期の目的を達成した。今後とも、改良を進めてゆき、簡便な比熱測定装置として完成させたい。
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