本研究の目的は、動的解析が可能な時間分解メスバウアー分光法の確立にある。 電子捕獲などの核壊変にともなう化学的後遺効果やその緩和過程、また光・放射線などの照射によって生成される準安定状態、さらに磁場、電場など外的条件を変化させた時の磁性体、誘電体などにおける臨界現象などを研究するために必要なメスバウアー分光器の試作を行なっている。 1.時間分解メスバウアー分析器の試作 マイクロコンピューター(PC-9801)を事象処理装置とするマルチパラメーター・メスバウアー分光器を昨年度より試作しているが、今年度は入力インタフェイスの試作を進め、調整作業、開発ソフトウェアのテスト及び改良を行なった。 また、【^(57)Co】のEC壊変後の122keV-14.4keVカスケードの遅延同時計数実験を行うため、検出器および回路の検討を行い、改良のための試作を行なった。 主な検討点は、【i】)122および14.4keVγ線に対する検出効率の改善、【ii】)タイミング特性の改良、【iii】)パイルアップなしに比較的強い線源が使えるよう工夫すること、などであった。 種々検討の結果、14.4keVγ線検出には薄いNaI結晶を使用するが、122keVγ線検出器としてはプラスチック・シンチレーターを採用することが最適であると判断して製作にとりかかっている。 2.時間分解分析法の応用の検討 【^(57)Co】EC壊変の後遺効果研究の対象としてマグネタイトなどのスピネルB位置にCo置換した試料を調製し、現在通常スペクトルを測定している。 また、磁性流体、生物起源の磁性微粒子フェリチンを準備し、交番磁界を印加して時間分解メスバウアー測定を行うことを計画している。
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