X線CT法の基本思想に基づき、構造物あるいは試験片表面における電気ポテンシャル分布の測定値をもとに、逆問題解析手法を用いてき裂の存在位置、形状、寸法を測定する電気ポテンシャルCT法を提案した。逆問題解析手法として、境界要素法を援用した未知境界同定法および境界残差最小化法を開発・提案した。未知境界同定法では、不完全規定境界上の電気ポテンシャルおよび流束を境界積分方程式により求め、き裂存在面を流束=0の部分として求めた。また、境界残差最小化法では、種々のき裂形状に対し計算された電気ポテンシャルとこれらの観測値の間の残差をとり、残差を最小にするものを最尤き裂形状とした。これらの逆問題解析手法の改良および他の問題に対する拡張的適用についても議論した。電気ポテンシャルCT法の適用性を検討するため、種々の二次元き裂および三次元き裂の位置、形状および寸法の同定に関する数値シミュレーションを実施した。解析の対象としたものは、二次元物体中の縁き裂、内部き裂、および複数内部き裂、ならびに三次元物体中の表面き裂および内部き裂である。物体の裏面に存在する表面き裂を前面上の電気ポテンシャルより同定する試みも行った。数値シミュレーションより、これらのき裂の位置、形状および寸法は電気ポテンシャルCT法により同定できることが明らかとなった。また、電気ポテンシャルCT法の実際的適用例として、鋼板製試験片の中に存在する二次元縁き裂および内部き裂を同定する実験を行った。その結果、き裂の位置および寸法がよい精度で測定できた。さらに、電気ポテンシャル法が高温条件下のき裂の監視に利用できることが実験的に示された。以上のような数値解析的検討および実験的検討より、電気ポテンシャルCT法がき裂の位置、形状および寸法の定量的測定法として実用可能であることが明らかとなった。
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