焼結切削工具を用いた切削作業中に発生する工具切れ刃の欠損を予測する手法をすでに提案している。これを実行するためには基本データとして工具材の破壊応力特性とくり返し衝撃によるその推移(劣化の推移)が必要である。本研究はこの基本データを得るための試験機の試作に関するものである。特に高度の脆性材料であるサーメット、セラミック等に対しても安定した衝撃くり返し負荷を可能とすると同時に、切削時の工具刃先が受けると同程度の高温下での試験を行える様にする。 まず、本研究室で開発した衝撃引張り・圧縮試験機の一部に耐高温用セラミックを用いることにより、使用高度を引き上げると同時に赤外線加熱炉を装着することにより試片付近のみの加熱を可能とした。また所定の雰囲気中の試験を可能とした。ついで同試験機を用いて超硬合金工具材の高温における破壊特性、劣化特性を検討した。その結果、800℃以下では破壊応力は低くなるものの破壊様式に変化はなく脆性破壊であること、また劣化の進行に対しては温度は何等影響しないことを確かめた。続いてアルミナセラミック(【Al_2】【O_3】)について同様の試験を行った。同材料の破壊応力は700℃までは室温と同一であるが、800〜900℃近傍で最大となり、破壊様式も脆性的なものから延性的なものに推移すること、また同一品質表示でも製品間のバラツキが極めて大であることを確認した。劣化に対しては温度が非常に大きく影響し、800℃近傍での衝撃応力のくり返しにより劣化の顕著な進行が見られる。 劣化試験と平行して超音波の伝播減衰の変化を測定した。その結果劣化が進行すれば試片内で超音波の伝播減衰が大となること、特に高周波でこれが大なることを確かめた。しかし、現状の単純な方法では試片と探触子間の伝播減衰が一定でなく、定量的に変化量を同定するには到っておらず、今後の検討を必要とする。
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