本研究で開発された多点式レーザ流速計(LMSV)は従来型のレーザ・ドップラ流速計(LDV)の諸問題を取り除いた高精度で安価かつ取扱いの容易な装置であると言える。LDVは粒子の散乱する光の周波数(ドップラ周波数)が粒子、従って、これを運送する流体の速度に逆比例することを利用しており、その周波数を精度よく測定することを最大課題とするが、問題点として測定体積中に2個以上の粒子が共存すること(不確定性)を許さないこと、および光学系等によるノイズの除去が完全でなければならないことなどが上げられる。測定が不連続で統計的データ処理を必要とすること、変動の大きな流れに対して面倒な処理装置が必要なことなどはこれに起因しており、他の流速計に比して格段に高価である。 LMSVはドップラ周波数を測定する代わりに、測定断面をスクリーン上に拡大投影し、スクリーンに設けたイメージセンサーによって断面を通過する粒子を追跡するもので、イメージセンサーは2個の主受光素子とその間に等間隔に配置した補助受光素子とからなり、受光素子のそれぞれは処理装置のゲート回路に繋がれていて最初に主受光素子を通過した粒子だけを追跡し、その経過時間を測定できるように構成されている。これによって、粒子濃度を高め連続測定が可能となったが、主受光素子の間隔は従来型に比して十分大きくとることができるから時間の測定は容易で精度も改善された。 装置は光学的拡大部や受光素子だけの光電変換器を必要とする煩わしさはあるが、処理装置は簡単で極めて安価である。 5μmの細線を張った回転円板を用いて行った較正の結果は、0〜10m/sの範囲で完ぺきな作動をすることが確認された。 現在、水素気泡(d=10μm)を用いた水路中での測定を実施中であるが、予備実験の結果は十分に満足すべきものである。
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