本研究は、自然界のクリーンエネルギの有効利用の一端の波浪発電の全く新しい方式の基礎的開発研究を目的としている。 本波浪発電方式は海洋上浮体の波浪による揺動を、フラ・フープの回転と同様の原理によって起こる不平衡ロータの引込み現象を応用して、発電機を伴うロータ系の回転運動エネルギに変換する新しい発電方式である。その基礎的なエネルギ変換特性を求めるため昨年度に引続き基本モデルによる実験解析ならびに非線形振動理論の手法を適用した理論解析、さらには数値解析を行った。 洋上の浮体を1自由度振動系にモデル化し、これに加わる波浪を一定の周期、一定の振幅の正弦波と仮定して、浮体上に取付けた大形不平衡ロータを波の振動に同期して回転させ、一方、ロータに歯車増速機を介して発電機負荷を与えた場合について解析し以下の結果を得た。 1.不平衡ロータの相対位相角、すなわち船体振動に対するロータの遅れ位相角は、軸出力の増大とともに増加する。そして出力が或る値、すなわち最大出力点に到達するとロータは同期から逸脱し、回転を停止する。このときの最大相対位相角は約80°となる。 2.波浪の振動数が船体の固有振動数に近いほど、すなわち共振点に近いほど、また波浪の振幅が大きいほど変換可能出力は増大する。 3.船体の振幅および位相角は、波の波高、振動数が一定の場合も発電機負荷の大きさによって影響を受ける。 4.本エネルギ変換装置は共振点より低い振動数においては安定に作動する。しかし、共振点より上方の振動数の場合η=1.2〜1.5の範囲に不安定領域が存在して、運転出来ない。 5.重力の作用による回転の変動は、それ自体が本装置の特性には影響しないが、回転系の慣性モメントの増量によって小さく抑えることが出来る。
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