三ケ年計画の中間年にあたる本年度は、昨年度購入した大型電磁石を用いた基礎研究が進み多くのデータが得られた。第一は、五種類の石炭に対し、その処理量・キャリアガス速度依存性、繰り返し処理効果等を詳細に調べ、全分離量のピークと分離灰分量のピークは異なるガス速度に対応し最適ガス速度が存在することが初めて明らかとなった。また、こうした関係を灰分除去率と炭分回収率との対応関係として定め、最適処理条件を求めた。その結果、同じ粒径範囲であっても最適ガス速度は炭種により異なること、処理性能(灰分除去率が大きく炭分回収率が小さいほど良い)が炭種により著しく相違していること、この性能は必ずしも鉄分の含有率や全体の磁化率に依存しているのではなく、その存在形態、粒子形状等にもよることが判明した。また繰り返し効果の大きなオーストラリア炭では回収率77%で灰分除去率46%と良好な結果が得られた。更に、今年度購入した電源用変圧器を用いることにより外部印加磁界を従来より20%以上強めて(18kG)同様な実験を行い、強磁界になる程1回当りの処理能力は大きくなるが分離性能そのものは飽和傾向にあることが認められた。第二の連続処理方式については、捕獲用強磁性体部分を可動としたカセット式装置を試作し調べた結果、短いものでは磁気力が大きく励磁中は動かせられないことが判明し、別の形式について検討中である。尚、カセット式に伴ない、磁性体部の交換が容易なことから様々なものがテスト可能となり、従来の強磁性線に替えて多数の角を溝により設けた磁性板を用いたところ、磁性分が増加した結果、空間磁力が強まり、また機械損も減少して線型よりも処理能力の向上が縦溝型で観測され、今後、更に処理能力向上が望みうることが判明した。評価に関しては、新規購入した電子天秤により精度が向上したと共に、熱刺激電流と磁気分離効果との相関も明らかとなった。
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