1.まえがき 直流電力ケーブルの絶縁破壊に空間電荷が関与していることは良く知られている。長期間課電したCVケーブルの両電極を一旦短絡し、開放すると、電極間に電圧(残留電圧)が観測される。これが空間電荷に起因すると考えられることから、残留電圧の発生と破壊につながる劣化を結びつける試みが行われている。しかし従来の残留電圧の測定では電圧の大小を観測するだけで、残留電圧と空間電荷さらに劣化との対応がうまく得られていない。本研究は残留電圧観測時に種々の初期電位を与える新しい方法により、絶縁体中の空間電荷を短時間に定量的に測定しようとするものである。さらに残留電圧測定時に試料に温度勾配を与える方法により電荷分布の測定や極性の判定を行うものである。 2.残留電圧による短時間測定と従来法との比較 新しい短時間測定法によりポリエチレンフィルムについて種々の充電条件で実験を行った。従来から行われている熱刺激表面電位による測定も同一フィルムについて行い、両者を比較した。新測定法は従来法の結果と良く一致した。本測定法は短時間に簡単に空間電荷等を測定できることから、極めて有効であると考えられる。 3.温度勾配残留電圧による空間電荷の分布測定 残留電圧測定中に初期電位を与え、さらに両電極間に温度差を与える温度勾配残留電圧により空間電荷の分布測定を行えることが、本研究において明らかとなった。この新しい測定法によるシミュレーション結果を示し、さらにポリエチレンについての分布測定を試みた。本測定法を用いることで比較的簡単に空間電荷の分布を測定できると考える。本測定法は簡単なため実ケーブルへの応用が容易であると考える。
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