1.昭和59年度で得られた研究成果、すなわちくさび形構造液晶セルやフレネル構造のプリズム液晶セルにおける液晶分子の配向と電圧印加時の光学的特性の測定結果、並びにフレネル構造の液晶レンズにおける可変焦点効果等の研究成果に基づき、着用が可能な焦点距離可変の眼鏡の設計及び試作を行なった。すなわち、直径が37mmの円形フレネルレンズ及び透明導電膜を有するガラス板を用いて、眼科検査用の試験枠に插入できるような構造の液晶による可変焦点レンズを作成した。 2.前記第1項で述べた焦点距離可変眼鏡において、温度変化による特性の変化の補償法及び電圧印加による応答並びに回復特性の改善法など、実用化を行なう場合において重要となることが予想される種々の問題点を取り上げて検討を加え、これらの諸特性の改善法として複屈折バイアス法を考案し、駆動装置の試作を行ない、その動作特性を測定した。 3.焦点距離可変眼鏡において予想される種々の光学収差、特に液晶における光学的異方性及び液晶分子の配向特性に基づく収差について実験的検討を加え、その原因並びに解決法について考察を行なった。 4.距離センサとして超音波送波器及び受波器を用い、焦点距離可変眼鏡と組み合わせることにより、機械的可動部分を持たずに全自動的に焦点距離を可変できる眼鏡を設計し、試作を行ない、その動作特性を測定した。 5.試作した焦点距離可変の眼鏡における各種の特性の測定を行ない種々の問題点等を明らかにするとともに、また解決すべき点について検討を加えた結果、焦点距離可変眼鏡の特性をより一層向上させるための指針が得られた。
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