本研究の目的は、超音波と生体組織の非線形な相互作用の一つである音速の音圧変動への依存性を示すパラメータB/Aの空間的分布を映像として得るための装置を構成し、その特性の評価およびこれを用いた医用診断装置としての実用器の開発に必要な設計データを収集することであった。 まず装置の構成については高性能の超音波振動子を購入し、これに製作した機械的走差機構を加えた超音波の送受波部を構成し、これからの信号をやはり本研究費で購入した波形記憶回路を介して、位相復調、逆フイルタなどのために構成した信号処理系に導き、これらの結果をマイクロコンピュータで処理し、最終的にカラー表示された映像を得ることのできる具体的系を初期の目的通り構成できた。 次にこの装置を用いてまずグリセリンを満たしたサンプルを用いて映像系としての基本特性を調べ、これらの結果より特性の校正の方法等も明らかにした。次に生きたハムスターを用いて映像を得たが、その結果生体組織の特性化にこの装置が極めて有用であることを明らかにすることができた。これらの成果は論文(1)、(2)に報告した。 また、これらの成果は世界的な注目をあつめ、(3)に示すように国際会議でも招待講演として発表し大きな反響を得た。この装置より得られた設計データをもとにすでに国内のある電機メーカーが臨床用の装置を別途製作し、乳房部の癌等の診断装置として医師に供しようとしている。このように科研費をいただいたことにより実用化が大いに進み感謝すると共にこの装置による診断精度の画期的向上を期待できる所まできたことを大きな喜びとするものである。
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